紀子は、夢うつつに肌寒さを感じて目が覚めた。窓の方を見ると、カーテンの隙間から明るい日が差している。ふと、時計を見ると、もう七時を過ぎているのだった。 真一の方を見ると、紀子に背を向け、背中を丸めるようにして、まだぐっすりと眠っている。
夜には森閑として、まるで音のしない世界に来たように静寂だったのに、窓の外から野鳥が囀っている声が耳に入ってくる。さらに耳を澄まして外の音を聞いていると、別荘地の下の道路を走っているのか車の音が時折かすかに聞こえてくる。 もう、こんな高原の森の中にも、動物や人間たちの営みが始まっているのだった。 紀子は仰向けになって、ぼんやりと天井を見ながら、昨夜のことを思いだしていた。
まだ、紀子の下半身には、真一の残した逞しさと、なん度も嬉し泣きをさせられた快感がわずかに残っているような感じがした。 真一は、昨夜、昼寝をしたせいか、ベッドに入ってからも、逞しく紀子を責め続けた。紀子は真一のあまりの激しい攻撃に、「真一君、もう堪忍して!」と、なん度も訴えたが、真一は容赦なく紀子の身体をさまざまなかたちにして、責め続けたのだ。
紀子が息も絶え絶えになって喘いでいると、しばらくは、優しく抱きすくめながら、「先生、僕は本当に愛しているよ。世界中の誰よりも先生のことが好きだよ」と、稚拙な言い方ながらも紀子への愛を訴えるのであった。 紀子は、そんな真一の言葉に身体の奥深くから喜びが湧いてきた。同僚の教師に無理矢理に関係を続けさせられている時には、肉体的には、紀子はエクスタシーをなん度も与えられたが、あの教師には紀子への愛情というものは、かけらも無かった。 ただ、若い紀子の身体を慰みものにし、おのれの快楽を追求するだけだったのだ。 けれども、真一は自分も密かに愛していた相手であったし、なん度もなん度も、好きだとか愛していると言ってくれるのだ。 紀子は、身体の歓びも深かったが、それ以上に、真一のひた向きに自分を愛してくれる気持ちが、ことのほか嬉しかった。
真一が寝返りを打ったので、ふと見ると身体に掛けていたシーツと毛布が剥がれて、真一の下半身が丸見えになっている。 紀子は、思わず真一のペニスに目がいった。それは、眠っているくせになにか夢でも見ているせいなのか、半分ほど勃ち上がっているのだった。紀子は真一が熟睡しているので、まじまじとそれを見続けた。自分は真一のこの逞しいものに翻弄され、喜悦の叫びを挙げ続け、〈小さな死〉に、なん度なん度も追いやられたのだ。
そう思うと、このモノが愛しく、それでいて小憎らしい気もするのだった。紀子は、眺めている内に、思わず磁石に吸い寄せられるように顔を近づけ、そっと唇を寄せた。 真一が目を覚まさないように、手は触れないまま、大きく口を開けると、口の中に含み込んだ。
それは、口の中で熱く、脈を打っているような感触があった。口から出して、今度はそっと幹に頬ずりをした。堪らなく、それは愛おしく可愛らしかった。 真一が、まだ起きそうもないので紀子はそっとベッドから下りると、ブラジャーとパンティを身につけると、昨日真一が喜んでくれたスリップドレスを手に持って、足音を忍ばせて下に降りた。
シャワー浴びたかった。 浴室で、熱めのシャワーを浴びると、身体中に染みついている昨夜の真一との、濃厚な愛撫の名残がすべて流されてしまったような気がして惜しい気もしたが、身体の中に新たな活力が甦ってきたような感じがした。
浴室から出て、リビングのカーテンを開け放ち、外を見ると既に太陽が昇っていて、唐松や白樺の葉が照り映えていて、キラキラと輝いている。遠くには、南アルプスと思われる山並みが連なっている。空は既に蒼く澄み渡っている。
紀子は、キッチンで朝食の準備をした。朝食の準備を終えて、そろそろ真一を起こさなければと思い、再び二階の寝室に行った。真一は、壁側に身体を向けて、まだ眠っている。紀子は、そっと反対側になっている真一の顔を覗き見ようと、ベッドに半分上がり、顔を近づけた。 すると、突然、真一はがばっと起きあがり、紀子の手を捕まえると、いきなり ベッドに引きずり込んできた。 「あら、起きてたの? 駄目よ、真一君。さあ、朝ご飯の準備も出来たから……」と、言ったが、紀子は押し倒され、組み敷かれていた。
「先生、さっき僕に悪戯したでしょ?」と、上から見下ろしながら言った。 紀子は組み敷かれ、万歳のかたちを取らされた両手をがっちりと抑え付けられながら、「知らないわよ。夢を見たんでしょ」と言った。 「嘘だよ。僕はちゃんと起きてたんだから」と真一はわざと、怖い顔をして見せながら、そう言い、さらに、「これから、仕返しをしてあげるからね、先生」と言った。 つづく
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